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zoom RSS 東京フィルメックス〜小林政広監督「幸福」

<<   作成日時 : 2006/11/23 15:00   >>

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幸福と書いてシアワセと読む。

昨年の東京フィルメックスではグランプリを受賞した、「バッシング」の
小林政広監督最新作「幸福」を見に、第7回東京フィルメックス会場に向かいました。

上映前の舞台挨拶では、小林監督と出演の石橋凌、桜井明美、橘実里が登壇。

「この映画は、これが初めてのワールドプレミア上映ということで、今日はとても緊張しています」という小林監督。

小林監督の映画に出るのは『殺し』に続いて2回目という石橋凌は、
「とても暖かい雰囲気の撮影現場で、撮影は楽しい思い出」と語り、
主に舞台で活躍し、映画はこれが初出演という桜井明美は、
「舞台も映画も演ずることについては基本的に同じ。
監督の人柄のおかげで、とてもいい雰囲気で撮影できた」と話して、
撮影がとてもアットホームな雰囲気の中で進められたことが伺われました。

さて、映画のほうは、「バッシング」と同じく北海道のある街が舞台なのですが、
「バッシング」のときのドキュメンタリータッチとはちょっと変わって、
大人の人間模様を描いた味わい深い作品でした。

「幸福とは、拾うものである。」

そんなちょっと唐突なコピーと、「白夜の季節」という意外な設定とともに、
映画は始まります。

北海道は勇払(ゆうふつ)の街にふらりと現れた中年男(石橋凌)。
街外れの公園で行き倒れになった彼を見つけた、孤独な中年女(桜井明美)。
この二人の奇妙な共同生活を軸に、場末のバーのマスター(村上淳)と
その客(香川照之)、マスターの恋人(橘実里)らの人間模様が、
勇払の淋しく殺風景な街の景色の中で、乾いたユーモアとしっとりとした情感の中で
描かれていく…。

大人をうーん!とうならせる深いドラマだったと思います。
「バッシング」とはまた違った意味で、見ている間も、見終わった後も、
色んなことを考えさせられました。
人生って、家族って、幸福って、なんだろう。

「幸福とは、拾うもの」というコピーの意味が、最後の最後で分かるようになっていて、
モラルや常識だけでは量ることのできない、
一筋縄ではいかない人のシアワセというものについて考えさせてくれます

この映画の登場人物はみんなとても不器用で、
不器用ゆえに仕事も家庭もなかなかうまくいかなくて、支えきれなくなって、
耐えられなくなって・・・。

そんな人間が幸福をつかむにはどうしたらいいのか・・・。
いや、こうしたらいいとか、努力すべし、とかではなくて、
ひょっこり拾ったりするのがシアワセ。
そういう考えって、素敵です。

今の世の中、「お金がないと幸せになれない」
と思い込んでいる人が多いのじゃないかな。
シアワセは拾うものだから、本当はお金なんか関係ないのに・・・
そんなことも思わせてくれる映画でした。

さて、映画の上映後は、再び小林監督が登場して、
ティーチインが行われました。

この映画は、わずか10日間で撮影されたとのこと。

「予算の都合で、一週間以内で撮影してしまうことがほとんど。
今回は製作会社ディーツーゲイトが出資してくれたので、
10日かけることができて「長いな」とうれしくなったほど」

と、相変わらず気取りのない小林監督です。

そして女性司会者は、香川照之の演技を絶賛。
映画の中で、バーの常連客の香川が「心凍らせて」という歌を決まって歌う、
そのシーンが何回か差し挟まれるのですが、その歌い方が毎回違うと。
(彼は話が進むほどに、心理的に切羽つまった状況になっていくのですが、)
それは監督が細かく演技指導されたのですか? と司会者が尋ねると、

「それはもう、香川君は分かっている人ですから、ほとんど彼に任せました」

とのこと。さすがですね。
思えば去年の「バッシング」上映のときは香川照之も舞台挨拶に来ていたのですが、
今年は超売れっ子になってしまったせいか、来なかったですね。

あとは司会からの、日本で白夜の街、という特異な設定についての質問については、

「バッシングのようなドキュメンタリータッチとは違って、今回はフィクシャスなドラマだから、
何か特徴が欲しかった。そこで白夜という設定を盛り込んでみた」

とのこと。
そういえば去年、舞台挨拶で香川照之が「小林監督は日本のアキ・カウリスマキだ」
って言ってましたが、白夜とはますます北欧的。

さて会場からは、主演の石橋凌と桜井明美が劇中で
ちょっと奇妙な歩き方をしていたことについて、
質問が飛び出しました。それ、私も気になってたんですよね。

「二人とも精神的に参っちゃった経験があるという設定で、
そういうのは絶対歩き方に出ると思ったから、
それを表現してくださいとお願いした。」とのこと。なるほどね。

映画の中で石橋凌は人生に疲れきったような、
桜井明美はまるで魂の抜けたような、そんな歩き方をするんですよね。

あとは「監督の映画は、どうしていつも人物があまりいないような、殺風景なシーンが
多いのですか?」という質問が。

「予算の関係でエキストラがあまり多く登場するようなシーンはやりにくいのと、
あとは北海道のああいう街って、現実にも本当にあまり人が歩いていない。
特に冬の寒い中で外で何かやっているのは、映画撮っている奴くらいで(笑)。」

とまたまた気取りのない答え。

小林監督の映画の風景って、乾いていて、寒々していて、殺風景で、
でもそんな中でドラマが繰り広げられるからこそ、余計なものに目移りせず、
登場人物の心情をじっくり追ったり考えたりできるような、
そんなゆとりというか、時間的空間が生まれているような気がします。
それがなんとも、心地よいです。

最後に客席に来ていた「幸福」スタッフの方々が監督から紹介され、
拍手のうちにティーチインは終わりました。

この映画、去年の「バッシング」上映時と同様、
まだ配給と一般公開は決まっていないとのこと。
司会者が、会場に来ているプレスの方は映画が気に入ったらぜひ清きご一報を、
と強調してましたが、私もこの映画が劇場で全国公開されることを願ってやみません。

小林監督の映画は、監督自身が脚本を書いて、資金調達して、俳優やスタッフを集めて、
撮影して・・・そうやって作ったんだなあということが、
映像から直に伝わってくる感じがするのです。

巷でもてはやされている商業映画とは対極にあって、
映像も音声も、高等技術を使ったものとはぜんぜん違うけど、
映画の本当の面白さはそんなところにはないんだということを
改めて実感できる気がするのです。

だからたくさんの映画ファンに、ぜひ見て欲しい映画です。
見終わった後「ああ面白かった」だけではなくいろんなことを考えたり、
一緒に見た人と話がはずむ映画だと思います。

というわけで、「幸福(しあわせ)」強力プッシュ!
オトナはこういう映画見なくっちゃな、という一本だと思いました。



*2008年9月20日より、「幸福」が限定ロードショー公開されます!
場所はシネマート六本木にて。見逃さないでね!

http://www.shiawase-movie.jp/

見た方はぜひ、感想を語り合いませう。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
『幸福 Shiawase』チラシいただきました〜
9月20日〜10月3日まで2週間限定 シネマート六本木で公開 監督・脚本 :小林政広出演:石橋凌、桜井明美、村上淳、橘実里、柄本明、香川照之 本多菊次朗さんも出てますよ〜。俺はひそかに菊ちゃんファンな ...続きを見る
ねこぞを@頭のおかしい人の日記
2008/08/29 02:01

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
CS放送で7作品、見させて頂きました。
映画の大事な基本だと思うから、一言苦言を〜・・・
セリフの音声が80%聞き取れませんでした。
ボリュームをUPすると急に桜井さんが大音量!
ボリュームボタン片手に疲れまして、後半ほとんど2倍速で流し見しちゃいました。
脚本も苦心されて作ったと思いますが、これでは、オーディエンスに何も伝わりません。
SOUND Designのクレジットありましたが絶対変えるべきです。
これではジムジャームッシュ氏どころでは無く、とうてい追いつけないでしょう。
「愛の予感」は面白かったですが、とにかく残りの6作品は「言葉」が聞き取れずイライラさせられ通しでした。
これからは絶対テロップ付けて下さい・・・・
すいませんチョットカラクチで・・・・
johnny
2009/06/09 17:53
johnnyさん、コメントありがとうございます。
それは残念でしたね。上映時はそんなことなかったと思うのですが。
音響技術については私はさっぱりなんですが、原版の問題なのか、テレビ放映時の問題なのか、どうなんでしょうね。私もBSで映画を観るときは、通常のテレビよりはだいぶ音量を上げていたりするんですが。

しかし日本映画にも字幕があってもいいんじゃないかというのは、私も思っています。
というのも私は人より耳がよくないみたいで、モスキート音も聴こえないし(若くないからか?)、邦画のセリフも一部聞き取れないことがあったりしますから。

「幸福」あまり楽しめなかったみたいで残念です。でも香川照之の「心凍らせて」とか、村淳が経営するどうしようもない場末スナックの灰皿ピーナッツとか、わたし的にはものすごくツボでした。
ぴむ
2009/06/09 20:04
びむさん江〜
私は大の映画ファンです。
小林監督は今まで見るチャンスがなく、CS放送での「愛の予感」が初めてでした。

こういう人も日本の監督さんに居たんだと感心しました〜でないと7本全部見ません、悪しからず・・・・
基本的にはこれからも応援したい監督さんのお一人です、絶対に・・・・。

彼は演出〜脚本〜プロデュースを低予算の中とは言え、細やかな感性で制作されてます。
ワンカット見ただけで充分解るし、伝わります。

すごく期待して見てましたが、
肝心の「セリフ〜言葉」が音声の「技術的問題」で伝わらないのは、非常にじれったい思いがしてここにカキコミさせていただきました。

基本的には自分と「分母」が同じ監督さんなのでファンになりました。
これからも影ながら応援させていただきます。
頑張って下さい!!!
johnny
2009/06/10 13:19
johnnyさんが筋金入りの映画好きなのは、前のコメントからも伝わってきましたよ〜。
私が小林監督作品に興味を持ったのは「バッシング」からだったので、初期作品はまだ見てないんですよ。私はBSしか加入していないので、小林監督作品にはなかなか出会えません。CSのほうが圧倒的に放映作品は多そうですね。でもwowowだけでも手一杯な私です。

こちらこそ、よろしくお願いします。
また気になることがおありでしたら、気軽にコメントいただければ幸いです。
映画を愛する方とお話できるのはとても楽しいですね。
ぴむ
2009/06/12 00:08

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