昭和の思い出シリーズ:乞食

いきなり過激なタイトルですみません。
昭和は遠くなりにけり。というわけで、昭和時代の私の思い出を、思いつくままにときどき書いてみたいと思います。


昭和40年中頃の話。
私が家で遊んでいて、ふと玄関先を通りかかると、そこには知らないおじさんが立っていた。
みすぼらしい黒いコートを着て、黒い帽子をかぶった、ヒゲづらの30がらみの男の人である。
片手にはなぜかクリスタルの灰皿を持っている。
私はちょっと面食らったが、その男が「おうちの人はいますか?」というので、
まだ5歳くらいだった私は、無邪気に「お客さんだよー」と、家の人を呼びに行った。

たまたま手が空いていた祖母が玄関先に出た。
私が隣の部屋から玄関先をのぞくように見ていると、
男と話している祖母は、何かとても困った様子である。
クリスタルの灰皿を間に挟んで、何か激しく押し問答をしているようでもある。
何事かと心配した母も玄関先に出てこようとしたが、祖母が制止している様子。

しばらくして男はやっと帰っていった。
やれやれといった表情をしている祖母に「あれ、誰?」と聞くと、祖母はこう答えた。

「あれは、お乞食さんじゃ」

それを聞いた母もちょっと驚いて、「それでお義母さん、どうしたの」と聞くと、
「いくらかのお金を渡して帰ってもらったわ」と祖母。
どうやらあのおじさんは、どこから持ってきたのか不明なあの灰皿を売ろうとしたらしい。
祖母は灰皿は受け取らず、岩倉具視の500円札を渡して帰ってもらったらしい。

母は私のほうを見ながら、「いやあねえ、この子ったら、乞食のことをお客さんだなんて」
と呆れ顔。それを聞いた祖母は笑い出すし、私は自分のせいでもないことで、えらく恥ずかしい思いをしたのであった。

お乞食さん。昔は結構いたのよねえ。

ちなみに祖母の話によると、その頃は、昔ながらの「押し売り」もたまに来たらしい。
「押し売り」とは、トランクにゴムひもやたわしを入れてやって来て、
すごんで無理やり高い値段で売ろうとする、いわばヤクザさんの訪問販売である。
でもそんな時は、身体のでっかい父が玄関先に出て行くと、
すっ飛んで逃げ帰ったそうである。

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